不動産査定の種類と算出方法
目次
- ○ 不動産査定の方法
- ○ 不動産業者による不動産査定とは?
- ・簡易査定とは
- ・訪問査定とは
- ・査定に必要な書類について
- ○ 査定価格の算出方法
- ・取引事例比較法
- ・収益還元法
- ・原価法
- ○ 査定前の準備
- ○ 不動産業者に査定を依頼するときのポイント
- ○ まとめ
不動産査定の方法
不動産の金額を出す方法には、「不動産査定」と「不動産評価」の2種類があります。
それぞれ算出する方法や算出された価格の利用目的も異なるため、違いを明確にしておく必要があります。
まず「不動産査定」は、不動産を売却する場合に、売却金額の相場を算出する方法です。
「不動産査定」は、不動産会社がおおよそ3カ月を目安に売却が可能だと考える金額を提示するもので、ほとんどの場合で無料です。
実際の販売価格は市場の動向も考慮するため、査定価格と販売価格は異なります。
一方、「不動産評価」は、より正確に不動産の価値を算出する方法で、資格をもった不動産鑑定士が有料で行います。
不動産鑑定士は、査定金額の根拠を明らかにする義務があります。
信頼性の高い価格になるため、相続争いの裁判など公式な価格が必要な場合の査定方法です。
不動産業者による不動産査定とは?
不動産を売却する場合に不動産会社に算出してもらう「不動産査定」には、簡易査定と訪問査定の2種類の査定方法があります。
簡易査定とは
簡易査定は机上査定とも言われ、実際に不動産を見ることなく机上で金額を算出する方法です。
算出には、立地や面積などのデータのほか、近隣の同じような条件の不動産の販売価格などが利用されます。
簡易査定は、インターネットによる一括査定も含まれます。
算出までのスピードも速く、気軽に査定金額を出してはもらえますが、現地を見ずに算出するため、室内設備状況や残置物状況などが加味されず、精度は低くなります。
訪問査定とは
訪問査定は不動産業者が現地を訪問して、面積などのデータ以外の詳細状況を確認し、より正確な査定金額を算出する方法です。
実際に不動産を売却する場合の不動産業者との契約時には、訪問査定が必要になります。
訪問査定では、駅から現地までの道のりや周辺環境、建物・部屋の状況などを確認して評価を加えます。
データだけではわからない、より正確な査定金額が算出できるため、売却金額を決めるときの参考にします。
訪問査定では必要書類に関して役所確認作業が必要になることもあり、算出まで1週間ほどかかる場合もあります。
査定に必要な書類について
簡易査定と訪問査定では、必要な書類が異なります。
簡易査定の場合、書類の提出は必要ありませんが、データの確認のために手元に書類を用意します。
簡易査定に必要なデータはおおむね下記の通りです。
・住所
・面積
・間取り
・築年数
一方、訪問査定ではより正確な査定金額を算出するために、建物に関する書類をできるだけ用意します。
・権利書
・登記簿謄本
・公図
・測量図
・建物の図面
そのほか、不動産業者に指定された書類をそろえます。
査定価格の算出方法
では、実際に査定はどのような方法でおこなわれるのでしょうか。
査定方法には、取引事例比較法・収益還元法・原価法の3種類があり、物件によって査定方法を選択したり組み合わせたりして算出します。
3種類の査定方法をそれぞれ解説します。
取引事例比較法
取引事例比較法は、売却物件の近隣で条件が似ている物件の販売価格を比較して価格を算出する方法です。
実際の計算は、近隣の坪単価から売却物件の坪単価を算出し、販売物件の個別情報から補正を加えたうえで算出します。
同じような条件の販売事例を多くそろえる必要があるうえに、補正内容は査定する不動産業者によって異なるため、査定価格に違いが生じます。
不動産業者に査定を依頼した場合は、取引事例比較法により査定価格が算出されるのが一般的です。
収益還元法
収益還元法は、対象物件が将来生み出す収益を予測して経費などを差し引き、価格を算出する方法です。
特に、賃貸用など投資用の不動産で用いられる算出方法です。
収益還元法には、直接還元法とDCF法の2種類があります。
【直接還元法】
直接還元法は、一般的に1年間の収益を還元利回りで割って価格を求める方法です。
還元利回りとは不動産から得られる利益の目安です。立地条件など、周辺の類似した物件の利回りを参考に割り出します。
条件によりますが、首都圏の物件ですと概ね利回り5~10%になるのが一般的です。
還元利回りが高くなるほど、物件リスクが高く、不動産価値としては低くなります。
直接還元法(対象物件の査定価格)=一定期間(1年間が多い)の純収益÷還元利回り
たとえば、1年間の家賃収入が120万円、年間諸経費が20万円、還元利回りが8%でしたら、
(120万‐20万)÷8%=1,250万円
となり、直接還元法による査定価格は1,250万円になります。
【DCF法】
DCF法は、一定期間の賃料収入と一定期間後の売却金額から現在の価値に割り引きした金額を合計し、価格を算出する方法です。
「現在の価値に割り引く」とは、5年後の100万円より現在の100万円の価値が高いと考え、5年後の価値を現在の価値に直して算出することです。
これは、現在100万円をもらう場合と、5年後に100万円もらう場合で考えるとわかりやすくなります。
現在100万円をもらい貯金をすれば利子がつき、5年後には100万以上になっています。
つまり、5年後に100万もらうより、今100万もらった方がよいということになります。
逆に5年後の100万は、現在の価値でいうと100万以下ということです。
この考えから、1年ごとに賃料収入から割引率を算出した価格を合計して、現在の価値でいくらであるかを算出します。
たとえば、1年間の賃料収入が100万円、2年後に1,000万円で売却、割引率が5%の物件の場合、
1年後の価値は、100万÷(1+0.05)≒95万
2年後の価値は、95万÷(1+0.05)≒90万
同じように、売却金額も約900万円となり、
2年後に売却する物件を現在の価値にすると、
95万+90万+900万=1,085万円
となります。
割引率を考えない場合1,200万円になりますから、価値に差があることがお分かりいただけると思います。
実際の計算では、経費や修繕などさまざまな要因で純収益はさらに低くなると考えられます。
DCF法では、より正確な収益金額を算出できますが、計算方法は複雑です。
原価法
原価法は、もう一度今の物件を建築し直した場合にいくらになるかを割り出して、築年数に応じた減価修正をおこない算出する方法です。
土地と建物の価格を出す場合に、より正確な価格を算出することができます。
そのため、戸建て住宅の価格を算出する場合に多く使用される査定方法です。
既成市街地に建つ戸建て住宅の場合は、土地については「取引事例比較法」で、建物については「原価法」で算出した価格を合計して算出するのが一般的です。
既成市街地の場合、もともとの造成費用などが不明なためにこの方法がとられます。
土地の場合でも、造成費用などが適切に求められる場合は「原価法」が適用できます。
原価法の一般的な計算式は、
原価法=再調達価格×延べ床面積×減価修正
減価修正は、残耐用年数÷耐用年数です。耐用年数は、構造の種類によって決まっています。
査定前の準備
ここまで、査定方法にどのようなものがあるかを確認してきました。
戸建て住宅やマンションを売却する場合は、取引事例比較法や原価法による査定金額の算出が多くなります。
ここからは、戸建て住宅やマンションの査定価格を少しでも高く算出してもらうには、どのような用意をすると効果的なのかをご紹介します。
取引事例比較法では、販売物件の個別情報から補正がおこなわれます。
原価法では、再調達価格の単価は構造のほか、物件のグレードにより異なります。
そのため、個別的な要因による価格補正で高い評価を受ければ、査定価格が高くなると考えられます。
では、価格補正で高い評価を受けるケースは実際にどのようなものがあるのでしょうか。
リフォームがおこなわれているかどうかは、価格補正で加算の対象となります。
また、太陽光発電などの設備を追加していることでも加算されます。
かといって、査定金額をアップさせるためにリフォームをしても、リフォーム費用を販売価格に上乗せすることは難しいため、慎重な決断が必要です。
また、査定に訪れる人も人間ですから、散らかっていたり汚れていたりするよりも、きれいで整理されている物件の方が印象は良くなります。
可能な限り片付けることはもちろんですが、大きく印象が変わる場合はハウスクリーニングも検討します。
不動産業者に査定を依頼するときのポイント
不動産業者による「不動産査定」は、不動産を売却する場合に、売却金額の相場を算出する方法です。
つまり、販売を開始してから3カ月以内に売却できると予想される金額を査定金額として算出します。
不動産は全く同じものは存在しないため、決まった金額というものはありません。
需要と供給によっても価格は変動します。
また、不動産業者によって基準が異なることや、査定する人の個人的な感覚のずれ、高い査定金額を提示して契約を結びたいという営業的な思惑などが影響し、不動産業者によって査定価格が違ってきます。
不動産業者によって査定価格が異なるため、査定は必ず複数社に依頼することが重要なポイントとなります。
複数社の査定金額を比較することで、正しい相場を知ることができます。
注意したいのは、査定金額が高いからという理由で不動産業者と契約を結ばないことです。
査定では高い価格を提示しておいて契約にこぎつけようとする不動産業者も存在します。
そういった不動産業者は、結局は売れないからと値下げを持ちかけてくることがあります。
正しい相場を知っていれば、相場より高い査定価格に疑問を感じることもできます。
まとめ
不動産査定は、不動産売却の最初の一歩になります。
査定方法の種類と算出方法を知ったうえで、複数社に査定を依頼して疑問に感じた価格には根拠を説明してもらうことも重要です。
そのためにも、査定金額がどのような方法で算出されているかをある程度知識として持っておくのがよいでしょう。
不動産業者によって最終的に売却できる金額に差が出ることもあるため、より高い価格で売却するためにも不動産業者選びはしっかり行いましょう。
査定価格は、最終的な売却価格ではありません。
また、査定価格はあくまでも目安であるため、不動産業者によって違います。
この2点を忘れることなく、よいパートナーとなる不動産業者をみつけてください。